Shockは敢えてサージを消していない~新説GOATSアドバンテージ論~
ステージ2プレイオフ決勝を見返していて気になったシーンがあったので記事にします。
それは1MAP目のLijiang TowerのNight Marketでの集団戦。この直前にお互いにサウンドバリアを、Haksalがラリーを使ってShockが集団戦に勝利しています。
そしてこのシーン。お互いサージ自爆と虹彩そしてシャターがあるのがわかっています。
ここで問題になるのがサージ自爆を打つのかどうかという点です。サージ自爆は虹彩を貫通できるコンボなので強力な分、対策としてザリアのバリアを合わせるというのが一般的になっており、リーグ全体でかなり成功率が低くなってきています。最近ではそこにシャターまで合わせてタンクのウルトを3つ使うという荒業もあります。
ここで話を戻しましょう。お互いサージ自爆があるのがわかっているので、先打ちしたとしてもザリアのバリアで防がれるでしょう。だからといってそこにシャターを合わせてその集団戦に勝ったとしても、次の集団戦はウルト差で負けてしまいます。しかもポイントのパーセンテージも負けている上にまったく進んでいないので、負けるにしてもなるべく99%まで確保したいところです。つまりゲーム全体で考えたときにShockが勝つには2つの方法を迫られます。
それは「なるべく最小限のウルトを回して勝つ」か「相手にも同じだけウルトを使わせて勝つ」かのどちらかです。
この状況で前者は非常に難しいです。なぜならShockはこのマップではファーストウェーブに負けて取返しでお互いウルトを1つずつ使いあって勝ったので、ウルトを潤沢に持っていることは両者ともに明らかです。サポートウルトがある以上、必要最低限で抑えるのは現実的ではないでしょう。
となると選択されるのは後者です。しかし上で書いたようにサージ自爆だけでは足りず、シャターまで使うと次がきつくなります。そこでShockのとった行動が敢えてコンボを狙わない波状攻撃です。ここで敢えてサージを打たせるという戦術が出てきます。
実際の流れを見てみましょう。
わざとマトリックスを見せてサージを打たせ、即座に自爆を返すことで追撃しようと前に出たゼニヤッタが避けられず死なないために虹彩を吐かざるを得なくなり、自爆で盾が割れてシャターが通り、使わせた虹彩の終わり際にサージを打って4キルとり、しかも自爆とシャターも使わせるという完璧なシナリオ。
今回は敢えてサージを打たせるという戦術を紹介しましたが、 サージ自爆の成功率が低い(というより防ぐのが当たり前になってきた)ので、実はShockに限らずいくつかのチームは相手のサージに自爆を返すという戦術を取っています。DVAをロームさせてザリアの視界の外からマトリックスを張って最大限サージ消す努力をしながら、もし消せなかった場合は相手のサージの位置に自爆を投げるという動きをしているプレイヤーを間々目にします。
これには2つメリットがあります。まず相手のハルトがチャージでひとり持っていくことができなくなること。もうひとつは、相手のDVAが自爆を投げた場合かなりの確率で中身(ソンハナ)を飛ばせるということです。
サージと自爆を合わせるのが強いという思考にとらわれてしまがちですが、一歩引いて試合全体の流れを見てみると違った選択肢も生まれてきます。特にウルトを読まれているときは相手もバリアを温存して戦うのでコンボを決めるのは簡単ではありません。さらには上のシーンのようにコントロールでパーセントが負けている(特に99%取られている)ときは、どのように試合を進めていけば(=どんなウルトの使い方をすれば)勝てるのかまで考える必要があります。
あえてサージを打たせるという大胆な一手こそが勝機なんだと伝わるシーンでした。